高齢化とストレスがめまい患者を増やしている
私たちの体がバランスを保つには重力や加速、回転などを感知する耳の中の前庭(三半規管と耳石器)、目そして体性感覚と呼ばれる足裏の深部知覚器からの情報が必要です。この3つの情報を小脳で集約して、それを大脳が統括することで、自分が動いていても景色が止まって見えるように頭と目の動きをコントロールしています(図1)。つまり私たちがバランスを取れるのは、耳と目と足と脳の共同作業ができているからで、このうちのどれか一つに不具合が生じたなら、バランス感覚が崩れてめまいが起きてしまうわけです。
初めて強いめまいに襲われたとき、誰しも「脳の病気じゃないだろうか?」と考えて不安になりませんでしたか?しかし急激なめまい発作だけでは危険な病気の兆しであることは稀です。危険かどうかを見分けるポイントは1、手や足のしびれや麻痺がある2、しゃべりにくい、飲み込みにくい3、殴られたような激しい頭痛がある4、立てない、歩けないといった症状が合併している場合は脳に障害が生じている可能性が高いのですぐに病院に行って下さい。このような随伴する症状のないめまいは、耳の中の前庭が原因のことが多く、大抵少し横になっていれば数分から数十分で治まります。(例外として前庭神経炎は激しいめまいが数日続き、入院を余儀なくすることがあります。)すなわちめまい以外の症状がなければあまり心配する必要はありません。
図1
めまいの患者さんで最も多いのが60歳以上の定年世代で、夫が毎日家にいるようになり生活のパターンが変化する時期です。そのためかどうかはわかりませんが女性の方が男性よりはるかに多くめまい外来にいらっしゃいます。もう一つは40歳後半の更年期の世代です。「イライラする」「頭が重い」などの不定愁訴が現れる時期です。また性格によってもめまいを生じやすい方がおられます。真面目で責任感の強い方で、頼まれごとを断れない。空気を詠みすぎて過度な気遣いをしてしまう方は要注意です。
めまいに少しでも関心のある方はこの病名を聞かれたことがあると思います。めまい患者の8割の方は耳が原因で、その中で最も多いのがこの病気です。じっとしていると何ともないのに、寝返りを打ったり、急に立ち上がったりしたときにグルグルと目が回る。しかし1分以内に治まります。この病気は前庭の耳石器という部分にある30μほどの炭酸カルシウムでできている小さな粒が剥がれて三半規管の中を浮遊することによって生じます。放っておいても通常は2~3週間で自然に治ることが多いため病院に行かない患者が多いと推測されます。しかし繰り返すことが多いのも事実です。年に数回繰り返すような方は専門医に行かれて、浮遊耳石が三半規管のどの部位にあって、どのような状態かを診断してもらうことをお勧めします。専門医なら場合によっては耳石置換術といった三半規管内のクプラというセンサーからめまいの原因になっている浮遊耳石を遠ざける手技を施したり、自力で治す方法を教えていただけるかもしれません。もちろん耳からくるめまいは良性発作性頭位めまい症以外にも多々ありますし、またストレスが強いとめまいもなかなか治りにくくなります。
良性発作性頭位めまい症に次いで多いのが片側性前庭障害によるめまいです。加齢、血流障害またウイルス感染などが原因で片側の耳の中の前庭のバランス機能が低下するために生じます。一過性に数週間ほどで回復するケースもありますが、前庭神経炎のように1年以上悩まされる疾患もあります。このようなしつこいめまいは寝ていても治りません。薬もあまり効果はありません。治りにくいめまいかどうかの違いは左右の前庭機能の落差によります(図2)。一側の前庭機能の低下を小脳の働きで補うのがめまいのリハビリ体操です。小脳にバランスの取り方を学習させて、前庭機能の低下を補うわけです。しかししつこいめまいを患者自身で治す意思があまり強くないと、リハビリ指導をいくらさせていただいても改善しないもどかしさもよく経験します。「何とか治したい!」といった信念を持った患者さんは真剣にリハビリに取り組まれ、症状が和らいできます。ほんの少しでも良くなったことに幸せを感じながら毎日のリハビリを続けていただければと願っております。
日本めまい平衡医学会認定 めまい相談医 増井裕嗣
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